死後事務委任契約の条項例

死後事務委任契約は、単にお葬式や部屋の片付けをするだけのものではありません。 「誰にも知られたくない秘密を処分してほしい」「大切な家族(ペット)を確実にお願いしたい」といった、ご自身のプライバシーや尊厳に関わるデリケートなご要望を、法的な効力をもって第三者に託すことができる強力な制度です。

標準的なひな形では対応できない、現代ならではの特殊なご要望を実現するための条項例をご紹介します。

目次

家族には内緒にしている友人やコミュニティにだけ知らせてほしい

「親族とは疎遠なので連絡しなくていいが、長年趣味を共にしているサークルの仲間や、オンラインゲームの友人には、自分が亡くなったことを伝えてお礼を言ってほしい」という、現代的な人間関係に配慮した通知のご要望です。

第○条 第2条1項1号の連絡は以下の方法で行うものとする。

 ①親族には連絡しないこと

 ②別紙名簿に記載された個人および団体に対して、甲死亡の事実および生前の感謝のメッセージ(別添書面)を郵送または電子メールにて通知すること

  • 💡 解説
  • ご親族は、あなたのご友人の連絡先をすべて把握しているわけではありません。あらかじめ弁護士に「誰に、どのような方法で、何を伝えてほしいか」というリストを託しておくことで、大切なご縁に対して、あなたらしい最後の挨拶を届けることができます。

葬儀はせず、遺骨を散骨してほしい

「お墓を持たず、海に散骨してほしい(海洋散骨)」「樹木葬にしてほしい」「お葬式は一切行わず、火葬のみ(直葬)にしてほしい」といった、ご自身の死生観に基づく特別な葬送をご希望されるケースです。

第○条 第2条1項2号の喪葬は以下の方式で行うものとする。

 ①通夜および告別式等の宗教的儀式は一切行わず、火葬のみを行うこと

 ②火葬後の遺骨につき、散骨を行うこと

 ③散骨を行えない場合は、適宜の方法で葬送すること

  • 💡 解説
  • このような特殊な葬送は、残されたご親族の価値観と合わず、反対されて実現しない、親族間でトラブルになることがあります。死後事務委任契約を結び、弁護士という第三者に手配を任せることで、親族の反対を押し切ってでも「ご本人の生前の強いご意思」を確実に実現させることができます。

残されたペットを確実に次の飼い主へ渡してほしい

ご自身が亡くなった直後、自宅に取り残されてしまうペットの命を守るための条項です。(※生きている間のペットの世話は「任意後見契約」、亡くなった後の引き渡しは「死後事務委任契約」と、セットで準備をしておくのが最も確実です)

第○条 甲は、乙に対し、以下の事務を委任する。

 ①甲が飼育する愛犬「○○」について、甲の死亡後速やかに保護し、事前に合意している○○○○(住所:○○県○○市~))へ引き渡すこと

 ②前号の引渡しができないときは、乙において、適宜引受人を選択のうえ、引き渡すこと。

 ③前各号の引渡しが完了するまでの間に生じる飼育費、医療費その他一切の費用を支払うこと

  • 💡 解説
  • ペットの命に関わるため、亡くなった直後に「いかに迅速に動けるか」が鍵となります。弁護士に合鍵を預けておくなどの事前の取り決めをしておくことで、万が一の際にも速やかにペットを保護し、あらかじめ決めておいた里親や施設へ確実にお繋ぎすることができます。

誰にも見られずにデータを消してほしい(デジタル遺品の処理)

スマートフォンやパソコンの中にある写真、メールの履歴、インターネットの閲覧履歴などを「死後、誰の目にも触れずに完全に消去してほしい」というご相談は、年齢や性別を問わず非常に多く寄せられます。また、SNS(LINE、Facebook、Xなど)のアカウントをそのまま放置しておきたくないというご要望も増えています。

第○条 甲は、乙に対し、以下の事務を委任する。

 ①甲所有のパソコンおよびスマートフォンについて、内部データを一切閲覧することなく、専門業者を通じて物理的に破壊または完全に初期化すること

 ②甲が利用していたSNSアカウント(別紙記載のIDおよびパスワード一覧に基づく)について、追悼アカウントへの移行、または退会・アカウント削除の手続きを行うこと

  • 💡 解説
  • ご親族に片付けを任せた場合、パソコンの中身を見られてしまう可能性があります。弁護士であれば、法律で厳格な「守秘義務」を負っているため、ご本人の「見ないで捨ててほしい」というご指示を忠実に守り、秘密を完全に墓場まで持っていくことが可能です。

誰にも言えないお悩みも、弁護士が守り抜きます

死後事務委任契約は、あなたのプライバシーと尊厳を守るための「最後の砦」です。 「こんなことを頼むのは恥ずかしい」「法律事務所に相談するようなことではないかもしれない」とご遠慮される必要は一切ありません。

ご自身が本当に望むエンディングを形にするために、どのような些細なことでも、まずは当事務所の弁護士へ安心してご相談ください。

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