遺言のモデル例

遺言書の内容は、ご家族の構成や財産の種類によって千差万別です。 「自分にはどんな遺言書が合っているのだろう?」とイメージしていただくために、代表的なモデルケースをご紹介します。

目次

ケース1:子どものいない夫婦で、配偶者に全財産を相続させる場合

1.財産を特定せず、包括して全財産を配偶者に相続させるシンプルなモデル例

第1条 遺言者は、遺言者の有する不動産、預貯金その他一切の財産を、遺言者の妻である○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、遺言者及び祖先の祭祀を承継する者として、妻○○○○を指定し、同人に祭祀用財産を承継させる。

第3条 遺言者は、本遺言の執行者として、妻○○○○を指定する。

  • 💡 解説
  • 第1条:一切の財産を配偶者が単独で相続させるシンプルな条項例です。なお、遺留分に注意してください。
  • 第2条:祭祀承継者を定めています。
  • 第3条:遺言執行者を定めておくと、スムーズに相続手続きを行うことができます。

2.主な財産を具体的に列挙したうえで全財産を相続させるモデル例

第1条 遺言者は、遺言者が有する別紙財産目録記載の財産を含む一切の財産を遺言者の夫○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。

(以下略)

                 財産目録

1 不動産

(1)所在 ○○県○○市○○町○丁目

   地番 ○番○

   地目 宅地

   地積 ○○.○○平方メートル

(2)所在 ○○県○○市○○町○丁目○番地

   家屋番号 ○番○

   種類 居宅

   構造 ○○造○階建

2 預貯金

(1)○○銀行○○支店の普通預金(口座番号○○○○)

(2)ゆうちょ銀行の通常貯金(記号○○○番号○○○○)

(以下略)

  • 💡 解説
  • 第1条:不動産や預貯金など、主な財産を明確に記載したうえで、それ以外の財産も含めて一切の財産を配偶者が相続させる条項例です。なお、遺留分に注意してください。

3.配偶者が先に亡くなった場合に備える「予備的遺言」を含めたモデル例

第1条 遺言者は、その有する不動産、預貯金、金融資産を含む全ての財産を遺言者の夫○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、夫○○○○が遺言者より先に又は遺言者と同時に死亡した場合には、前条に代えて前条記載の財産を、○○○○に包括して遺贈(寄付)する。

第3条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、第1条の場合には夫○○○○を、第2条の場合には、△△△△(昭和△年△月△日生。千葉市△△区・・・)を指定する。

  • 💡 解説
  • 第2条:配偶者が遺言者より先(または同時)に亡くなった場合、第1条は効力を持ちません。この場合に備えて、「○○○○が遺言者より先に又は遺言者と同時に死亡した場合には、~する。」という「予備的遺言」を追加しておくことが考えられます。
  • 第3条:遺言執行者についても予備的な場合を規定する条項例です。
  • 夫婦双方で上記遺言を作成すれば、死亡の先後を問わず配偶者が単独で相続することができます。

ケース2:子供のいる夫婦で、相続する財産を個別に指定する場合

1.基本モデル例

第1条 遺言者は、遺言者の有する下記の財産を、遺言者の妻○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。

(不動産)

 1 所在 ○○県○○市○○町○丁目

   地番 ○番○

   地目 宅地

   地積 ○○.○○平方メートル

  (略)

(預貯金)

 1 ○○銀行○○支店 普通 口座番号○○○○

  (略)

(動産)

 上記不動産内に存在する一切の家財道具

第2条 遺言者は、遺言者の有する下記の財産を、遺言者の長男△△△△(平成△年△月△日生)に相続させる。

(預貯金)

 1 ○○銀行○○支店 普通 口座番号○○○○

  (略)

第3条 遺言者は、第1条及び第2条に記載した財産を除く一切の財産を遺言者の妻○○○○に相続させる。

第4条 遺言者は、遺言者及び祖先の祭祀を承継する者として、長男△△△△を指定し、同人に祭祀用財産を承継させる。

第5条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、妻○○○○を指定する。

  • 💡 解説
  • 第1条、第2条:相続させる財産を個別に定めます。
  • 第3条:相続させる財産を個別に定める場合、記載漏れに備えて包括的な条項を規定しておくことが有効です。
  • 第4条:祭祀承継者を指定する条項です。
  • 第5条:執行者を定めておくと手続をスムーズに行うことができます。

2.相続人が先に亡くなった場合に備える「予備的遺言」を含めたモデル例

第1条 遺言者は、遺言者の有する別紙財産目録第1記載の財産を、遺言者の妻○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、遺言者の有する別紙財産目録第2記載の財産を、遺言者の長男△△△△(平成△年△月△日生)に相続させる。

第3条 遺言者は、長男△△△△が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、前条に代えて前条記載の財産を、遺言者の孫□□□□(令和□年□月□日生)に相続させる。

第4条 遺言者は、第1条及び第2条に記載した財産を除く一切の財産を遺言者の妻○○○○に相続させる。

第5条 遺言者は、遺言者及び祖先の祭祀を承継する者として、長男△△△△を指定し、同人に祭祀用財産を承継させる。

2 遺言者は、遺言者が死亡するより先又は遺言者と同時に長男△△△△が死亡した場合は、遺言者及び祖先の祭祀を承継する者として、孫□□□□を指定し、同人に祭祀用財産を承継させる。

第6条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、長男△△△△を指定する。

2 遺言者は、遺言者が死亡するより先又は遺言者と同時に長男△△△△が死亡した場合は、遺言執行者として、妻○○○○を指定する。

  • 💡 解説
  • 第3条:遺言者の死亡以前に長男が死亡した場合の予備的遺言です。妻が死亡した場合、その相続分は子供に帰属するので予備的遺言は規定していません。
  • 第5条:祭祀承継に関する予備的遺言です。
  • 第6条:遺言執行者に関する予備的遺言です。

ケース3:子供のいる夫婦で、配偶者が自宅に住み続ける場合

配偶者が自宅に住み続けることを希望する場合に有効なモデル例です。

1. 配偶者に不動産を取得させるモデル例

第1条 遺言者は、遺言者の有する別紙財産目録第1記載の不動産を、遺言者の夫○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、遺言者の有する別紙財産目録第2記載の預貯金を含む一切の預貯金を、遺言者の夫○○○○及び長女△△△△(平成△年△月△日生)に各2分の1の割合で相続させる。

第3条 遺言者は、前条までに記載した財産を除く一切の財産を遺言者の夫○○○○に相続させる。

第4条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、遺言者の夫○○○○を指定する。

  • 💡 解説
  • 第1条 自宅不動産を配偶者に相続させる条項例です。なお、遺留分に注意してください。
  • 第2条 預貯金については妻と子に2分の1ずつ相続させる条項例です。
  • 第3条 明記されていない財産について相続人を定める条項例です。
  • 第4条 遺言執行者を定めておくと、スムーズに相続手続きを行うことができます。
  • 子の遺留分に注意する必要があります。

2. 「配偶者居住権」を活用するモデル例

残される妻(配偶者)に引き続き自宅に住まわせてあげたい一方で、最終的な不動産の所有権は子どもに確実に引き継がせたい場合に有効な方法です。妻には「住む権利(配偶者居住権)」を、子には「所有権(負担付き)」を別々に取得させます。

第1条 遺言者は、遺言者の妻○○○○(昭和○年○月○日生)が遺言者の所有する別紙財産目録第1記載の建物に相続開始時に居住していたときは、同建物につき存続期間を終身とする配偶者居住権を遺贈する。

第2条 遺言者は、自宅不動産を前条の負担付きにて長男△△△△(平成△年△月△日生)に相続させる。

第3条 遺言者は、前条までに記載した財産を除く一切の財産を遺言者の妻○○○○に2分の1、長男△△△△に2分の1の割合で相続させる。

第3条 遺言者は、第1条の配偶者居住権に関する遺言執行者として妻○○○○を指定し、同権利に関する登記手続など第1条の遺言を執行させるための権限を与える。

2.遺言者は、前項以外の本遺言に関する遺言執行者として長男△△△△を指定し、不動産に関する登記手続、預貯金等金融資産の名義変更、解約及び払戻し、貸金庫の開扉・解約その他本遺言の執行に必要な一切の権限を与える。

  • 💡 解説
  • 第1条 遺言で配偶者居住権を定める場合は、「相続させる」ではなく「遺贈する」と記載します。
  • 第3条 自宅不動産以外の財産意に関する包括的な条項例です。
  • 第4条 遺言執行者の権限を分けて定める条項例です。

ケース4:不動産を売却して現金で分ける場合

不動産に住む予定の相続人がいない場合や、不動産を公平に分けることが難しい場合に有効なモデル例です。

第1条 遺言者は、遺言執行者に対し、別紙目録記載の土地及び建物を含む全ての遺言者の財産を適宜処分し、換価(換価困難なものは廃棄)することを指示する。

第2条 遺言者は、前条の換価によって得られた金員から、遺言者の医療費、公租公課、日常家事債務などの全債務を弁済し、また遺言執行に要する費用及び遺言執行者の報酬を差し引いた残金を、妻○○○○(昭和○年○月○日生)と長男△△△△(平成△年△月△日生)の両名に2分の1の割合でそれぞれ相続させる。

第3条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として長男△△△△を指定し、第1条記載の不動産その他の相続財産の処分・換価、所有権移転等の登記・登録手続、預貯金等の解約及び払戻し、貸金庫の開扉・内容物の引取り及び解約、債務の弁済等各種支払い並びに引き渡し等、本遺言の執行のために必要な一切の権限を付与する。

  • 💡 解説
  • 第1条:遺産の処分・換価を指示する条項例です。
  • 第2条:売却代金から債務弁済、遺言執行費用、遺言執行者報酬を差し引いた残金を相続させる条項例です。なお、相続人に譲渡所得税が発生する可能性があるので、注意が必要です。
  • 第3条:不動産の売却で相続人間にトラブルが生じる可能性があるため、手続きを行う「遺言執行者」をあらかじめ指定しておくことが有効です。遺言執行者を指定する場合、遺言執行者に処分・換価及び所有権移転登記手続の権限を付与しておく必要があります。

ケース5:法定相続人がいない場合

法定相続人がいない場合に、遺言書で財産の承継者を定めておかないと、遺産がすべて国に帰属することになります。これを防ぎ、遺言者の意思に従った遺産の承継を実現する場合のモデル例です。

第1条 遺言者は、遺言者の有する別紙財産目録第1記載の不動産を、○○○○(昭和○年○月○日生。住所…)に遺贈する。

第2条 遺言者は、遺言者の有する別紙財産目録第2記載の預貯金を含む一切の預貯金を、○○大学に遺贈する。

第3条 遺言者は、前条までに記載した財産を除く一切の財産を上記○○○○に遺贈する。

第4条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、上記○○○○を指定する。

  • 💡 解説
  • 第1条、第2条:法定相続人(配偶者や子ども)でない人に対して財産を渡すことを、「遺贈(いぞう)」と言います。
  • 第3条:漏れがないよう包括的に規定する条項例です。
  • 第4条:遺産承継を実現するために、遺言執行者を定めておくことが重要です。

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