任意後見契約の文言例

任意後見契約は、財産の管理や介護施設の手続きといった一般的な内容だけでなく、ご自身の特別な事情に合わせて「ルール(条項)」を自由にカスタマイズできるのが最大の魅力です。

インターネット上にある無料のひな形や標準様式では対応が難しい、少し複雑なご事情やデリケートなお悩みを解決するための、特殊な条項例(記載の工夫)をいくつかご紹介します。

目次

自分らしい「生活・医療・介護」を送るための条項

「趣味」や「ライフワーク」を最後まで楽しみたい(趣味への配慮・費用支出)

認知症になったり施設に入ったりした後も、「大好きな音楽のCDや本を買い続けたい」「定期的に大好きな観劇や美術鑑賞を楽しめる環境を整えてほしい」「長年集めてきた大切なコレクションを処分せずに保管してほしい」という、人生の潤いや尊厳を最後まで実現する条項例です。

第○条(趣味・娯楽に関する配慮及び費用支出) 任意後見人は、本人の身上監護にあたり、本人のこれまでの生活習慣及び趣味(音楽鑑賞、美術鑑賞、読書等)を尊重し、本人がこれらを継続できるよう、必要な書籍・物品の購入、または観劇や外出等の同行サポートサービス等の利用契約を本人の代理人として締結し、本人の財産からその費用を継続して支出するものとする。

2 本人が長年収集してきた○○(美術品、蔵書、コレクション等)の保管・管理方法については、本人の意向を尊重し、みだりに処分してはならない。

  • 💡 解説
  • 法定後見制度では、財産は「本人の生存に直接必要なこと」にしか使えないのが原則です。そのため、見知らぬ後見人が選ばれた場合、趣味の物品の購入や外出の費用などは「不要な支出」として一律に拒否されてしまうケースが多々あります。 しかし、任意後見契約であれば、「私にとって何が生きがいなのか」を事前に伝えることで、「自分らしく豊かな晩年を過ごすためのお金の使い方」を法的に公認させることができます。「趣味の付き添いサービスを契約する権限」や「コレクションを守る権限」を事前に与えておくことで、最後まであなたらしい潤いのある暮らしをサポートすることが可能になります。

介護や医療、施設ケアを自分で指定しておきたい(身上保護・生活設計)

「認知症になったら、住み慣れた自宅でヘルパーを頼んで暮らしたい」「もし施設に入るなら、あらかじめ指定したあの施設にしてほしい」という、ご自身の老後のライフプランを実現する条項例です。

第○条(身上配慮の責務及び医療・介護契約) 任意後見人は、本人の意思を尊重し、医療契約、入院契約、介護契約その他の福祉サービス利用契約、福祉関係施設入出所契約(特に○○ケアホームへの入所を優先する)に関する事項を代理する。

2 任意後見人は、適宜本人と面談し、日常生活援助者や主治医から心身の状態につき説明を受ける等、本人の生活状況及び健康状態の把握に努めるものとする。

  • 💡 解説
  • 任意後見人の重要な仕事の一つが「身上保護(生活や介護の手配)」です。後見人がおむつ交換や掃除などの介護(事実行為)を直接行うわけではありませんが、本人の代わりに希望通りの介護サービスや老人ホームの入所契約(法律行為)を結ぶ権限を持ちます。希望をあらかじめ明記しておくことで、判断能力が低下した後もご自身の理想の生活スタイルを維持できます。

定期的に声をかけてほしい

「任意後見契約を結んでも、実際に認知症になるまでの間、一人で暮らすのが不安」「健康状態を定期的にチェックして、適切なタイミングで後見をスタートさせてほしい」というケースです。

第○条(見守り) 受任者は、本日から任意後見契約が発効するまでの間、原則として月初めに電話で本人に連絡をとるとともに、毎月15日に本人の自宅を訪問して面談し、本人の健康状態、生活状況の把握に努め、本人が地域社会において安心して暮らすことができるよう見守る。

  • 💡 解説
  • 任意後見契約は、認知症等で判断能力が低下し、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任するまではスタートしません。そのため、お元気な間の不意の病気や生活の不安に備えて、「見守り」を同時に定めておくのが実務上非常に一般的で安心です。
  • 定期的にコミュニケーションを取ることで、認知症のサインを見逃さず、スムーズに任意後見へ移行できます。

大切な「家族・命」を守るための条項

障がいのある子どもや、高齢の妻の生活費を出し続けたい(扶養義務の履行)

「自分が認知症になった後も、子どもの生活費や、施設に入っている妻の費用は自分の財産から払い続けてほしい」という切実なご相談です。法定後見制度では「本人のための支出」以外は厳格に制限されることがありますが、任意後見契約で事前に指定しておけば、大切な家族を守り続けることができます。

第○条(親族の扶養等) 任意後見人は、本人の財産から、本人の長男である○○○○(平成○年○月○日生)の生活費、医療費、および介護費等として、毎月金○○万円を限度として継続的に支出するものとする。

  • 💡 解説
  • 本人の財産から「本人以外」のために定期的な支出をするには、契約書に明確な根拠と上限額を残しておくことが非常に重要です。事前に定めておくことで、将来、任意後見監督人に対しても堂々と正当性を説明でき、スムーズな支援が継続できます。

愛するペットの世話をお願いしたい(ペット飼育の委任・費用支出)

ご自身が施設に入所することになった場合など、自宅に残されるペットのことが心配でたまらないという方は多くいらっしゃいます。

第○条(ペットの飼育等に関する契約および費用支出) 任意後見人は、本人が飼育する愛犬「○○」について、本人が飼育できなくなった場合は、適切な飼育施設(老犬ホーム等)への入所契約を締結し、本人の財産からその入所費用および飼育費用を継続して支払うものとする。

  • 💡 解説
  • 「ペットにご飯をあげる」などの事実行為そのものは任意後見契約の対象外ですが、「飼育施設との入所契約を結ぶこと」や「飼育費用を支払うこと」は法律行為として委任可能です。ご自身が認知症になっても、愛する家族(ペット)が路頭に迷うことのないよう、確実な道筋をつけておくことができます。

「事業・資産」を維持・管理するための条項

アパートの経営管理など(個人不動産事業の継続)

ご自身でアパートやマンションなどの賃貸経営(個人不動産業)をされている場合、判断能力の低下は直ちに事業の停滞や入居者の不利益につながります。

第○条(不動産賃貸事業の管理等) 任意後見人は、本人が個人として営む不動産事業(不動産賃貸業等)に関する一切の事項(賃貸借・管理契約の締結・変更・解除、賃料の受領、修繕・建築工事の契約の締結・変更・解除等)を代理する。

第○条(事業継続のための借入れ及び担保提供に関する特約) 任意後見人は、本人が個人として営む不動産事業(不動産賃貸業等)の維持・継続、または保有する賃貸用不動産の修繕・建替えのために必要かつ合理的な範囲において、金融機関等との間で本人を借主とする金銭消費貸借契約(ローンの借り換えを含む)を締結・変更し、本人の所有する不動産に抵当権等の担保権を設定することができる。

2 前項の契約を締結するにあたっては、あらかじめ任意後見監督人の書面による同意を得るものとする。

  • 💡 解説
  • 個人で営む不動産業の管理・運営権限を、あらかじめ「どこまでの決断を任せるか」明確に契約に定めておくことで、不測の事態による経営のストップを防ぐことができます。
  • 後見制度は財産保全が大原則であるため、「新たに借金をする」「不動産を担保に入れる」行為は原則として認められません。しかし、不動産経営においては「適切な時期に投資(修繕)をしなければ経営が行き詰まり、結果的に本人の生活基盤が失われる」という特有の事情があります。事前に契約書で「事業の維持・継続のための借入れと担保提供を認める」という例外的な権限を明記しておくことで、いざという時に監督人や金融機関に正当性を説明し、スムーズな資金調達が可能になります。

自宅を安易に売られないようにする(居住用不動産の処分制限)

「自分が施設に入った後、後見人の独断で勝手に自宅を売却されてしまわないか心配だ」というケースです。

第○条(同意を要する特約) 任意後見人が、本人の居住用不動産を売却処分する場合には、個別に任意後見監督人の書面による事前の同意を要するものとする。

  • 💡 解説
  • 任意後見人には幅広い権限が与えられますが、思い出の詰まったご自宅の売却など、特に重大な財産処分については「任意後見監督人の同意がなければ売れない」という特約をつけることができます。これにより、ご本人の想いを無視した安易な財産処分に歯止めをかけることができます。

予期せぬ「トラブル・財産散逸」を防ぐ防衛的条項

特定の親族から財産を守る(不当要求の拒絶)

「昔から金銭トラブルばかり起こす親族がいる」「自分が認知症になったら、勝手に通帳を持ち出されるのではないか」といったご不安を抱えるケースです。

  • 【契約書の記載イメージ】第〇条(財産の保護と金銭貸付等の禁止) 任意後見人は、本人の〇〇である〇〇〇〇に対し、本人の財産から金銭の貸付け、贈与、および債務の保証等を一切行ってはならない。万一、同人から不当な要求があった場合は、任意後見人が法的な措置を講じて本人の財産を保全するものとする。
  • 💡 解説
  • 「この人には絶対にお金を渡さないでほしい」という強い意思を法的文書として残しておく形です。親族間のトラブルは感情的になりやすいため、第三者である弁護士が契約作成の段階からアドバイザーとして間に入り、かつ将来「契約で固く禁じられているため、一切応じられません」と毅然と対応できる仕組みを作っておくことで、ご本人の財産と平穏な生活を確実にお守りします。

「自分の老後は、自分で決める」。それは、あなた自身の尊厳を守ることであると同時に、残されるご家族への最大の優しさでもあります。 少しでも将来の生活にご不安を感じられましたら、まずは一度、当事務所へお気軽にお話をお聞かせください。約40年の実績に基づく確かなサポートで、あなたのこれからの安心を全力で支えます。

あなただけの「安心」をオーダーメイドで形にします

ここでご紹介したのは、ごく一部の例に過ぎません。ご家族の数だけ、抱えている事情や想いは異なります。

「こんな個人的な希望は、契約書に書けないのでは…」と諦める前に、まずは当事務所の弁護士にご相談ください。法律の専門家としての知見をフル活用し、あなたの人生と大切な人を守り抜くための「完全オーダーメイドの任意後見契約」をご提案いたします。

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